脂質は本当に悪者なのか?

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「なんとなく不調」の背景にある思い込み

「最近疲れやすい」「体が重い」「前より元気がない気がする」。
そんな小さな変化を感じながらも、「年齢のせい」「忙しいから仕方ない」と見過ごしていませんか?
情報が溢れる今、「何を信じて良いか分からない」と感じる人も多いでしょう。

中でも「脂質=太る」「体に悪い」というイメージは長年広まっており、避けるべきものとして扱われがちです。
しかしこの考え方、実は過去の誤解に基づいている可能性があります。

なぜ「脂質=悪」とされてきたのか

1980年代以降、欧米を中心に心臓病と脂質の関連が注目され、「低脂肪=健康的」という風潮が急速に広まりました。
この影響で、脂質は「ダイエットの敵」とされ、多くの人が極端に控えるようになりました。

しかし、近年の研究では、脂質の摂取量よりも「質」が問題であることが分かってきています。
むしろ、脂質は体のさまざまな働きに欠かせない大切な栄養素なのです。

脂質は体を支える大切な「素材」

脂質には多くの重要な役割があります。
まず、細胞膜の主成分であり、体の基本単位である細胞を守る働きを担っています。
また、ホルモンの材料でもあり、コレステロールから性ホルモンやストレスホルモンが作られます。

さらに、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収にも必要不可欠です。
これらは視力や骨の健康、抗酸化や血液の働きに深く関わっています。
脂質を極端に控えることで、これらのビタミン不足に繋がることもあります。

加えて、脂質は内臓を守るクッション材となり、体温を保つ断熱材の役割も果たしています。

「どんな脂質を摂るか」がカギ

脂質はすべてが体に良いわけではありません。
トランス脂肪酸や飽和脂肪酸の摂りすぎは、動脈硬化などのリスクを高めると言われています。
一方で、青魚やアボカド、ナッツ、オリーブオイルなどに含まれる不飽和脂肪酸、特にオメガ3脂肪酸は、炎症を抑えたり血流を改善したりと、体に良い働きをします。

「脂質=太る」と決めつけて避けるよりも、「何を、どう摂るか」に意識を向けることが、健康的な体づくりの第一歩です。

食卓でできる、小さな実践

良質な脂質を取り入れることは、特別なことではありません。
たとえば、朝食のサラダにオリーブオイルをかけたり、味噌汁にすりごまを加えたり、週に1〜2回は青魚を取り入れるといった工夫で、自然と体に良い脂質を取り入れることができます。

大切なのは「量を減らす」ことではなく、「質の良い脂質を、他の栄養素とバランスよく摂る」ことです。
脂質は炭水化物やタンパク質、ビタミン・ミネラルと連携しながら働いているため、栄養は“チーム”で考える必要があります。

数字だけに頼らず、日々の変化を観察しよう

健康診断の数値が正常でも、「なんとなく調子が悪い」と感じることはあります。
これは「未病」と呼ばれる状態で、病気ではないけれど心身のバランスが崩れかけているサインかもしれません。

東洋医学では、そうした微細な変化に気づき、整えることを大切にしています。
現代医学・栄養学と合わせて活用することで、自分自身の体の声に耳を傾け、より深く理解し、整えていく力が身につきます。

脂質を避けるのではなく、正しく理解し、賢く取り入れること。
それが、心と体のバランスを整え、もっと健やかな毎日へと導いてくれるはずです。

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