自然の中にある「備え」のヒント
日本は美しい自然に恵まれた一方で、地震や津波、豪雨、噴火など、いつどこで起きるか分からない災害とも隣り合わせの国です。
そんな中で大切なのは、特別な訓練ではなく、日常から「もしも」に備える視点を持つこと。
実はハイキングやキャンプなどのアウトドア活動には、その「備える力」を自然と身につけられる要素がたくさんあります。
たとえば、出かける前に天気を調べ、地図を確認し、必要な道具を用意する。
その一連の流れは、災害時に必要な行動とほとんど同じです。
災害時に役立つアウトドアの知恵
アウトドアでは不便を楽しむ工夫が欠かせません。
限られた道具で食事を作る、寒さや暑さをしのぐ、寝場所を整えるなど、環境への適応力が試されます。これらは、災害時の生活に直結します。
たとえば、携帯用バーナーや固形燃料で温かい食事を作る、ウェットティッシュや簡易シェルターで衛生やプライバシーを守るといったスキルは、ライフラインが止まった時に大いに役立ちます。
こうした経験があると、「なんとかなる」という安心感が生まれ、パニックに陥りにくくなります。
判断を鈍らせる「心のクセ」に気をつけよう
災害時に多くの人が陥りやすいのが、「正常性バイアス」と呼ばれる心理です。
「自分だけは大丈夫」「このくらいなら避難しなくても平気」と思い込んでしまい、判断を誤ってしまうのです。
もう一つ、「戻ってしまう病」という心理もあります。避難後に貴重品を取りに戻ったり、様子を見に行ってしまったりする行動で、実際に命を落とした例もあります。
こうした心理に打ち勝つためには、日頃から危険を想定し、どう動くかを具体的に考えておくことが大切です。
アウトドアの経験は、その「想像力」と「対応力」を自然と鍛えてくれます。
家族を守る準備、できていますか？
避難所での生活をイメージすると分かるように、大勢が集まる場所ではプライバシーや快適さが大きな課題になります。
アウトドアでテントやマットを使った経験があれば、簡易的な空間づくりができ、心身の負担を軽減できます。
また、トイレの問題も深刻です。
水が使えなくなると、家庭のトイレも避難所の設備も機能しなくなります。
携帯トイレは災害時の必需品。
家族分を数日分備えておくだけで、衛生面・健康面のリスクを大きく減らすことができます。
加えて、応急処置の知識も重要です。
怪我をした時の止血や、AEDの使い方を知っておくと、救助が遅れる状況でも命を守る行動がとれます。
地域の防災訓練や講習会を通じて、家族で一緒に学んでおくとより安心です。
楽しく学んで、備える習慣を
災害への備えというと難しく考えがちですが、楽しみながら学べる方法があります。
それが、自然とふれあうこと。
ハイキングは体力づくりにもなり、自然の厳しさや変化を肌で感じる機会にもなります。
週末に家族で山や公園を歩くことでも十分です。
「風が強い日は木の下にいないほうがいい」「水の流れを見てルートを変えた」そんな小さな判断の積み重ねが、いざというときに命を守る力になります。
アウトドアで得た知恵や工夫、そして「自然は人間の都合で動かない」という理解は、防災意識を自然な形で育ててくれます。
備えは難しくありません。
楽しみながら、自分と家族を守る力を身につけていきましょう。
