災害時にパニックを防ぐには?アウトドア経験から学ぶ「冷静さの力」

防災サバイバル

「災害が起きたとき、自分は落ち着いて行動できるだろうか?」
そんな問いかけに自信を持って答えられる人は、決して多くはないはずです。
でも実は、アウトドアやハイキングといった日常のレクリエーションの中に、その“冷静さ”を育てるヒントがあります。

日本に暮らす私たちは、地震や台風、集中豪雨など、いつどこで災害に見舞われても不思議ではない土地に暮らしています。
だからこそ、日頃から防災への意識と行動力を育てることが大切です。
今回は、自然の中で培われる「予想外に強くなる力」が、非常時の判断力や行動力につながるという視点から、防災について考えてみましょう。

災害時に立ちはだかる“見えない壁”

災害時に怖いのは、必ずしも自然そのものだけではありません。
実は、自分の心の中に生まれる“心理的なバイアス”が、命を危険にさらしてしまうこともあるのです。

たとえば、「自分は大丈夫だろう」と思い込む「正常性バイアス」。
避難情報が出ても「大したことない」「まだ様子を見よう」と判断を遅らせてしまうことがあります。
また、「家に忘れ物を取りに戻る」などの行動に出てしまう心理も多くの災害現場で見られてきました。
これらの行動は、過去の大規模災害でも命取りになることがありました。

人はパニック状態に陥ると、普段できる判断ができなくなります。
では、どうすれば極限の状況でも落ち着いて行動できるようになるのでしょうか。

予想外の連続。それがアウトドア

山歩きやキャンプでは、天気が急変したり、思わぬ道迷いに遭遇したり、予定通りにいかないことがよくあります。
そのたびに、今ある情報をもとに判断し、状況を整え、自分や仲間を安全に導こうと行動することになります。

こうした経験の中で私たちは、何が一番大事なのか、どの順番で行動すべきか、どうすればリスクを減らせるかといった「優先順位を見極める力」や、「とりあえずやってみる行動力」を自然と身につけていきます。

たとえば、雨が降ってきた時にすぐにタープを張る、水がない場所で浄水器を使って飲み水を確保する、思ったよりも体力を消耗したときに計画を見直して安全策を取る――
こうした判断と行動の積み重ねが、いざという時の冷静さの“筋トレ”になっているのです。

想定外を想定内にする力

災害時は「想定外」の連続です。アウトドアでも同じように、自然は思い通りにはなりません。
でも、その経験を積むことで、「どうにかできるかもしれない」という感覚が身についていきます。

たとえば、アウトドアでは、食事の準備よりも先に安全な場所の確保や水分補給を優先します。
災害時にも、何を最優先にするべきか、持ち物への執着を手放すべきか、瞬時の判断が求められます。

そして、危険を感じたら迷わず行動に移すという反射的な動きも、自然の中での経験があってこそ身につくものです。

知識と備えが冷静さを支える

もちろん、冷静な判断力だけでは十分ではありません。
実際の行動につなげるには、事前の備えと知識が必要です。

まず、自分の住む地域のハザードマップを確認し、津波・土砂崩れ・洪水といったリスクを把握しておくこと。
そして、家族で避難場所や連絡方法を話し合い、いざという時の行動を決めておくこと。

また、非常用の飲料水や食料だけでなく、携帯トイレや簡易シェルターなど、衛生と安全のための備蓄も見直しておきましょう。
最近では、防災体験施設や地域の訓練も充実しており、実際に体を動かして「どうすればいいか」を体験的に学べる場も増えています。

日常を「もしも」への備えに変える

災害と向き合うことは、決して恐怖にとらわれることではありません。
「自分はきっと冷静に行動できる」と信じられる土台をつくることです。

アウトドアは、その練習の場になります。楽しみながら自然に親しむ中で、予期せぬ事態に慣れておく。
そして、日頃からの防災意識や備えと組み合わせる。
その両方があることで、災害時にも落ち着いて行動し、自分と大切な人の命を守る可能性を高めてくれるのです。

今日からできる一歩として、自分の暮らす場所のハザードマップを見てみましょう。
そして次のアウトドアでは、「楽しみ」と「備え」を一緒に考えてみてください。
それが、未来のあなたを支える小さな力になります。

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