「寝ているのに疲れが取れない」は危険信号
朝起きてもすっきりせず、日中もだるさや集中力の低下が続く。
そんな状態が続いているなら、それは睡眠の「量」だけでなく「質」に問題があるサインかもしれません。
忙しい現代人は、つい睡眠を後回しにしがちですが、実は睡眠は健康やパフォーマンスを維持するうえで、最も基本的で重要な要素の一つです。
質の高い睡眠は、脳や体の疲れを回復させるだけでなく、傷ついた細胞の修復、ホルモンの調整、免疫力の維持、記憶の整理など、さまざまな「メンテナンス作業」を支えています。
この過程がうまくいかないと、心身の不調や生活習慣病のリスクが高まることがわかっています。
体内時計がカギを握る
私たちの体には「体内時計」と呼ばれるしくみがあり、約24時間のリズムで眠気や目覚め、体温やホルモン分泌などを調節しています。
このリズムが乱れると、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりといった問題が起こりやすくなります。
毎日同じ時間に起きて、朝の光を浴びることは、体内時計を整えるうえでとても大切です。
朝食を取ることで体が「1日の始まり」を認識しやすくなり、リズムを保ちやすくなります。
週末に寝だめをする場合も、普段の起床時間から2時間以上ずらさないことが望ましいとされています。
睡眠を妨げるNG習慣
睡眠の質を下げる要因は日常にいくつも潜んでいます。代表的なものが、カフェインやアルコール、強い光です。
カフェインは覚醒作用があり、摂取してから数時間は眠気を遠ざけます。
アルコールは一時的に眠気を引き起こすように見えて、実際には眠りを浅くし、中途覚醒を増やす原因になります。
また、就寝前にスマートフォンやパソコンなどの画面を見ると、ブルーライトがメラトニンという睡眠を促すホルモンの分泌を妨げます。
寝る1〜2時間前から画面を見ない、あるいは明るさを落とすなどの対策が有効です。
寝室の環境も大切で、静かで暗く、少し涼しいと感じるくらいの温度が理想的です。
日中の習慣が夜の眠りをつくる
質の良い睡眠は、日中の過ごし方にも左右されます。
たとえば、適度な運動は夜の眠りを深くしてくれることが多くの研究で示されています。
ただし、寝る直前の激しい運動はかえって睡眠の妨げになるため、夕方までに済ませておくとよいでしょう。
昼寝をする場合は、15〜20分程度の短い時間にとどめ、遅い時間帯や長時間の昼寝は避けるのが無難です。
また、就寝前の過ごし方も見直す価値があります。
リラックスできる入浴や静かな音楽、軽いストレッチなどを取り入れることで、自然に眠りにつきやすくなります。
食事とストレスの影響も忘れずに
睡眠の質は、食事や栄養状態とも密接に関係しています。
トリプトファンというアミノ酸は、脳内でセロトニンやメラトニンに変化し、心の安定と眠気を促す働きがあります。
ビタミンB群やマグネシウム、亜鉛なども神経やホルモンのバランスを整えるうえで重要な役割を担っています。
こうした栄養素を含んだ食事を心がけることが、自然な眠りを支える土台になります。
また、ストレスが溜まっていると、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりしがちです。
完全にストレスをなくすことは難しくても、自分なりのリラックス法を見つけて実践することが、心の安定と睡眠の質の向上につながります。