災害と共に生きる国・日本
日本は、地震や津波、台風、豪雨、土砂災害など、自然災害が多発する国です。
その理由は、四つのプレートが交差する地理条件と、雨や雪が多い気候にあります。
このような環境の中で、私たちは長年にわたり自然と向き合い、災害と共に生きてきました。
現代では、災害を「防ぐ」だけでなく、被害をできるだけ小さくする「減災」の考え方が広まっています。
これは、私たちが自然をコントロールすることはできないと理解し、共存の道を探る姿勢でもあります。
行動を左右する「災害時の心理」
災害時にどのように行動するかは、知識だけでなく心理的な反応に左右されます。
危険を過小評価して「まだ大丈夫」と思ってしまうのは「正常性バイアス」と呼ばれ、避難の遅れにつながります。
また、「みんなが動かないから自分も様子を見る」と判断を先送りする「同調バイアス」や、ショックで体が動かなくなる「凍り付き」、貴重品を取りに戻ろうとする行動も、危険を高めます。
特に高齢者に見られる「諦めの心理」は、避難の意欲を失わせてしまいます。
これらの心理的傾向を知っておくことで、自分自身の行動を冷静に判断できるようになります。
命を守る日頃の備え
自宅の安全対策は、防災の基本です。
特に1981年以前に建てられた建物は耐震基準が異なるため、点検や補強が必要です。
家具の固定や寝室の安全確保も欠かせません。
地震のあとは火災のリスクもあるため、避難時にはブレーカーを落とすことが重要です。
食料や水の備蓄は、「ローリングストック法」で無理なく行えます。
飲み水だけでなく、衛生管理のための生活用水も確保しましょう。
また、連絡が取れなくなることを想定し、家族でSNSや災害用伝言ダイヤルの利用方法を共有しておくと安心です。
応急手当の知識も、非常時には大きな力になります。
止血や心肺蘇生など、基本的な知識を日頃から学んでおきましょう。
想定を超える災害にどう備えるか
地域のハザードマップを確認し、避難経路を実際に歩いてみることは大切です。
しかし、災害は想定外の形で起こることもあります。
「この場所は安全」と思い込まず、状況に応じて柔軟に判断する力が求められます。
車での避難は渋滞によって逆に危険になる場合があります。
徒歩での避難を基本とし、津波の際は「遠く」よりも「高く」逃げることが原則です。
土砂災害では、湧き水の濁りや山鳴りなど、自然の小さな変化にも注意を払いましょう。
日常と防災をつなぐ暮らしの工夫
アウトドアの知識は、災害時の生活に役立ちます。
火を起こす技術や、携帯浄水器、バーナーやシェルターの使い方など、野外活動で培ったスキルは、自力で状況を乗り切る力になります。
非常時と日常の境界をなくす「フェーズフリー」という考え方は、普段の生活にも取り入れやすい防災の工夫です。
また、子どもへの防災教育も重要です。
基本的な知識を持つことで、子どもが自ら行動できるだけでなく、大人を避難に導くこともあります。
「空振りでも逃げる勇気」を、次の世代に伝えていくことが求められます。
学びを行動につなげていくために
自然の力を恐れるだけでなく、正しく理解し備えることが、命を守る第一歩です。
災害は、いつ・どこで・誰に起こるかわかりません。
だからこそ、一人ひとりが「自分にできること」を今日から始めることが大切です。
過去の教訓を未来につなげ、誰もが安心して暮らせる社会を目指していきましょう。