「防災」と聞くと、堅苦しいイメージを持ってしまう方も少なくありません。
非常食を揃えたり、避難経路を確認したりすることはもちろん大切ですが、実は、私たちの日常の中に、もっと身近で自然な防災のヒントが隠されています。
たとえば、キャンプや登山といったアウトドアの趣味もそのひとつです。
遊びながら身につく「生き抜く力」
アウトドアの魅力は、自然の中で工夫しながら過ごすところにあります。
焚き火で料理をしたり、テントを立てたり、飲み水を確保したりする体験は、災害時にとても心強いスキルになります。
停電やガスが使えない時でも、焚き火やカセットコンロを使った調理の経験があれば、冷静に行動できます。
また、飲み水が足りない場面では、携帯浄水器や煮沸の知識が命を守ります。
さらに、テント設営や寒さ対策に慣れていれば、避難生活でも安心して過ごすことができるでしょう。
アウトドアの経験は、遊びの延長でありながら、実際には「生きる力」を自然と身につける機会でもあります。
いつもの道具が「もしも」の備えになる
アウトドアで使う道具の多くは、防災用品としても非常に優れています。
たとえば、ヘッドライトやランタンは、停電時や夜間の移動に欠かせない存在です。
ポータブル電源やソーラーパネルがあれば、スマートフォンの充電や情報収集も安心です。
食料についても、キャンプ用のレトルト食品やフリーズドライスープは、長期保存ができて災害時にも活躍します。
普段から食べ慣れているものを備えておけば、いざという時にも不安が減ります。
また、簡易トイレや毛布、多目的に使えるシートなども、避難所での生活を快適にするアイテムです。
身近にあるものをうまく活用することで、無理なく防災に取り組むことができます。
精神面の備えもレクリエーションから育つ
防災には、物理的な準備だけでなく、心の備えも重要です。
災害に直面したとき、人は冷静さを失ったり、「自分は大丈夫」と思い込んで避難を遅らせたりしてしまうことがあります。
これを「正常性バイアス」といいます。
アウトドアでは、突然の天候変化やトラブルに対応する場面が多く、状況を判断して行動する力が自然と養われます。
こうした経験は、非常時に落ち着いて行動するための大きな力になります。
また、仲間と協力して物事を乗り越えた体験は、地域の人たちと助け合う意識を育てるうえでも大切です。
誰かと一緒に考え、動くことが、災害時の不安を軽減してくれます。
「特別なこと」ではなく「日常の延長」としての防災
防災というと、特別な知識や高価な備蓄が必要だと思いがちですが、そうではありません。
たとえば、日帰りのピクニックで火を起こしたり、お湯を沸かしてみたりするだけでも、立派な訓練になります。
また、家庭菜園での水管理や、DIYでの修繕スキルも防災に応用できます。
自転車での移動に慣れていれば、交通が止まったときの手段になります。
大切なのは、身の回りの道具や習慣を「災害時に使えるか?」という視点で見直すことです。
難しいことじゃない、“楽しむ備え”の始め方
「防災しなきゃ」と肩ひじ張るよりも、「今の暮らしをちょっと工夫してみよう」と考える方が、長続きします。
たとえば、いつものアウトドア道具の一部を防災リュックに加えておくだけでも安心感が違います。
そして、その経験や気づきを、家族や友人、地域の人と共有することが、地域全体の防災力を高めることにもつながります。
誰かの備えが、別の誰かの命を救うこともあるのです。
楽しみながら、備える。日々の中で無理なく身につく「生き抜く力」は、あなた自身だけでなく、大切な人たちの未来も守ります。
まずはできることから、小さく一歩を踏み出してみませんか?